Windows Subsystem for Linux (WSL) の始め方:初心者向け完全ガイド

WindowsでLinux環境を手軽に使いたい方に大人気の「WSL(Windows Subsystem for Linux)」。この記事では、WSLの基礎からインストール、初期設定、活用法、トラブル解決まで、初心者にも分かりやすく徹底解説します。

1. WSLとは何か?

WSL(Windows Subsystem for Linux)は、Windows 10/11上でLinuxのコマンドやアプリケーションを直接動作させるための仕組みです。仮想マシンやデュアルブートのような面倒な設定や重さはなく、Windowsの中で手軽にLinuxを使えるのが最大の特徴です。

  • Linuxのコマンドやシェルスクリプトがそのまま使える
  • GitやPython、Node.js、PHPなどの開発ツールも利用可能
  • サーバー(Apache, Nginx, MySQL等)のローカルテストもできる
  • WindowsとLinuxのファイルを簡単に行き来できる

2. WSLのメリット・デメリット

メリット

  • インストールがとても簡単(数分で完了)
  • 仮想マシンより圧倒的に軽く、PCのリソース消費が少ない
  • WindowsとLinuxの連携がスムーズ
  • 開発・学習・検証に最適
  • 無料で利用できる

デメリット

  • 一部のハードウェア制御ができない(USB直結等)
  • グラフィカルアプリは一部制限あり(WSLgで改善中)
  • 古いWindowsではWSL2が使えない場合がある

3. WSL1とWSL2の違い

WSLには「WSL1」と「WSL2」の2つのバージョンがあります。現在はWSL2が主流です。

特徴WSL1WSL2
カーネルWindows上でエミュレート本物のLinuxカーネル
互換性一部制限ありほぼ完全なLinux互換
ファイルI/OWindowsファイルアクセス速いLinuxファイルアクセス高速
Docker利用不可利用可能

WSL2はDockerや多くのLinuxアプリが動くため、特別な理由がなければWSL2を使いましょう。

4. WSLを始める前の準備

Windowsのバージョン確認

WSL2を使うには、Windows 10 バージョン1903以降(ビルド18362以上)またはWindows 11が必要です。
確認方法:

  1. 「設定」→「システム」→「バージョン情報」を開く
  2. 「Windowsの仕様」欄で「バージョン」と「OSビルド」を確認

古い場合はWindows Updateで最新化しましょう。

必要なハードウェア

  • 64bit CPU(Intel/AMD)
  • 仮想化機能(BIOSで有効化されていること)
  • インターネット接続

5. WSLのインストール手順

5-1. WSLの有効化

PowerShellで一発インストール(Windows 10 21H2以降/Windows 11推奨)

wsl --install

管理者権限のPowerShellで上記コマンドを実行するだけで、WSL2本体と標準のLinux(通常はUbuntu)が自動でインストールされます。

手動で有効化(細かく指定したい場合)

  1. 「コントロールパネル」→「プログラム」→「Windowsの機能の有効化または無効化」を開く
  2. 「Linux用Windowsサブシステム」と「仮想マシンプラットフォーム」にチェックを入れる
  3. OKを押して再起動

再起動後、PowerShellで以下を実行してWSL2を既定にします。

wsl --set-default-version 2

カーネルアップデートが必要な場合は、公式サイトからWSL2カーネルアップデートパッケージをインストールしてください。

6. Linuxディストリビューションの導入

6-1. ディストリビューションとは?

ディストリビューション(略して「ディストロ」)とは、Linuxの種類(例:Ubuntu, Debian, Fedora, openSUSEなど)です。WSLでは複数のディストロを同時にインストールできます。初心者には「Ubuntu」がおすすめです。

6-2. ディストリビューションのインストール方法

PowerShellで指定してインストール

wsl --install -d Ubuntu

Microsoft Storeからインストールする方法

  1. 「Microsoft Store」を開く
  2. 「Ubuntu」や「Debian」などで検索
  3. 「入手」ボタンでインストール

インストールが完了すると、スタートメニューに「Ubuntu」などのアイコンが追加されます。

7. 初回起動と初期設定

7-1. 初回起動

スタートメニューから「Ubuntu」などをクリックすると、黒いウィンドウ(ターミナル)が開きます。初回起動時は数分かかる場合があります。

7-2. ユーザー名とパスワードの設定

「新しいUNIXユーザー名を入力してください」と表示されたら、好きなユーザー名を入力します(例:yourname)。次にパスワードを2回入力します(入力中は表示されませんが、きちんと入力されています)。
このユーザー名とパスワードはLinux側のものです。Windowsのものと同じでなくても構いません。
パスワードは今後、管理者操作(sudo)などで必要になるので、必ず控えておきましょう。

8. WSLの基本操作

8-1. WSLの起動方法

  • スタートメニューから「Ubuntu」や「Debian」などをクリック
  • PowerShellやコマンドプロンプトで wsl と入力

どちらでもLinuxシェル(bash)が起動します。

8-2. 基本的なLinuxコマンド

コマンド説明
lsファイル・ディレクトリ一覧表示
cd ディレクトリ名ディレクトリ移動
pwd現在のディレクトリ表示
cp ファイル名 コピー先ファイルコピー
mv ファイル名 移動先ファイル移動/リネーム
rm ファイル名ファイル削除
mkdir ディレクトリ名ディレクトリ作成
cat ファイル名ファイル内容表示
nano ファイル名簡易テキストエディタで編集
sudo コマンド管理者権限で実行

例:ホームディレクトリにtest.txtを作成し、内容を表示する

cd ~
echo "Hello WSL!" > test.txt
cat test.txt

8-3. パッケージ管理(aptコマンド)

UbuntuやDebianでは「apt」コマンドでアプリやライブラリのインストール・更新ができます。

sudo apt update
sudo apt upgrade
sudo apt install git

ポイント:
・「sudo」は管理者権限で実行するコマンド
・「apt update」はパッケージリストの更新
・「apt upgrade」はインストール済みパッケージの更新
・「apt install パッケージ名」で新規インストール

9. WindowsとLinuxの連携

9-1. ファイルの共有

WSLでは、Windowsのドライブ(C:やD:など)はLinux側から /mnt/c//mnt/d/ としてアクセスできます。

cd /mnt/c/Users/ユーザー名/Desktop
ls

このように、WindowsのデスクトップやドキュメントフォルダにLinuxからアクセスできます。逆に、WSL内のファイルもWindowsから「\\wsl$\Ubuntu\home\ユーザー名」などでエクスプローラーからアクセス可能です。

9-2. クリップボード連携

WSL2では、WindowsのクリップボードとLinuxのクリップボードを連携させることもできます。
たとえば、Linuxの内容をクリップボードにコピーしたい場合は「clip.exe」を使います。

echo "WSLからクリップボードへ" | clip.exe

逆に、Windowsのクリップボード内容をLinuxで取得したい場合は

powershell.exe Get-Clipboard

10. WSLを使った開発環境構築例

10-1. Python開発環境

PythonはLinuxでの開発が非常に快適です。WSLでのPython環境構築例を紹介します。

sudo apt update
sudo apt install python3 python3-pip
python3 --version
pip3 --version

pipで必要なライブラリ(例:numpy, pandasなど)もインストールできます。

pip3 install numpy pandas

10-2. Node.js開発環境

Node.jsもWSLで簡単にセットアップできます。

sudo apt update
sudo apt install nodejs npm
node -v
npm -v

より新しいバージョンを使いたい場合は、nvm(Node Version Manager)の利用がおすすめです。

curl -o- https://raw.githubusercontent.com/nvm-sh/nvm/v0.39.5/install.sh | bash
source ~/.bashrc
nvm install --lts
node -v

10-3. Gitの利用

WSLでGitを使えば、Linuxコマンドでリポジトリ管理が可能です。

sudo apt install git
git config --global user.name "Your Name"
git config --global user.email "your@email.com"
git clone https://github.com/your/repo.git

11. WSLの便利な使い方・応用例

11-1. VS Codeとの連携

Visual Studio CodeはWSLと非常に相性が良く、「Remote – WSL」拡張機能を使えば、WSL内のLinux環境を直接編集できます。

  1. WindowsにVS Codeをインストール
  2. 拡張機能「Remote – WSL」を追加
  3. コマンドパレット(Ctrl+Shift+P)で「WSL: 新しいウィンドウで開く」
  4. Linux側のファイルを直接編集可能

11-2. Dockerの利用

WSL2ならDocker Desktopと連携して、LinuxコンテナをWindows上で動かせます。

  1. Docker Desktop for Windowsをインストール
  2. 設定で「WSL2バックエンドを使用」を選択
  3. WSLのターミナルで docker コマンドが利用可能に

11-3. シェルスクリプトの自動化

Linuxのシェルスクリプト(.shファイル)を使えば、定型作業の自動化やバッチ処理が簡単にできます。

#!/bin/bash
echo "バックアップ開始"
cp ~/data.txt /mnt/c/Users/ユーザー名/backup/
echo "完了"

このようなスクリプトをnanoやvimで作成し、chmod +x script.sh で実行権限を付与、./script.sh で実行できます。

12. よくあるトラブルとその解決法

12-1. インストール時のエラー

エラー例1:「WSL 2 requires an update to its kernel component」
WSL2カーネルアップデート を適用

エラー例2:「仮想マシンプラットフォームが有効になっていません」
→ コントロールパネルの「Windowsの機能」で「仮想マシンプラットフォーム」にチェックを入れて再起動

12-2. ネットワークがつながらない

WSL2は独自の仮想ネットワークを使うため、まれにネットワークが不安定になることがあります。
対処法:

  • Windowsを再起動
  • WSLを再起動(PowerShellで wsl --shutdown

12-3. ディスク容量不足

WSL2の仮想ディスク(.vhdxファイル)は自動拡張されますが、不要なファイルやキャッシュは定期的に削除しましょう。

sudo apt clean
sudo apt autoremove

13. まとめ

WSLは、WindowsユーザーがLinuxの力を最大限に活用できる素晴らしいツールです。インストールから基本操作、開発環境の構築まで、この記事の手順通りに進めれば、誰でも簡単にLinuxの世界を体験できます。
これからプログラミングやサーバー構築、データ分析などにチャレンジしたい方は、ぜひWSLを活用してみてください。

分からないことがあれば、コメント欄や公式ドキュメント、コミュニティで質問してみましょう。

よく使うタグ例

  • WSL
  • Windows
  • Linux
  • 開発環境
  • インストール
  • 初心者
  • Ubuntu

参考リンク

おわりに

この記事があなたのWSLライフのスタートに役立てば幸いです。もし不明点や追加で知りたいことがあれば、コメントやお問い合わせフォームからご連絡ください!